相続税節税事例等
相続税納税申告のための土地評価の原則は路線価方式です。画一的で簡便な方法ですので、大量の評価を一律の公平な方法で処理できるという意味で優れています。ただし、各土地の個別性を十分に考慮した適切な時価の算定に至らないことが往々にしてあります。適切な時価より安く算定されていれば納税者の側からすれば問題ないですが、高く算定されていしまう場合は、路線価評価ではなく、不動産鑑定評価を利用して適切な時価をベースに納税申告することも認められています。
鑑定評価による減額可能性がある土地は不整形地、無道路地、崖地、大規模地等の個別性が強いものと考えていただければと思いますが、案件ごとに判断の必要がありますので、お気軽にご相談ください。
相続税節税事例等
事例1 傾斜地(崖地)を含む土地の評価

傾斜地を含む土地は、傾斜角度が緩やかであれば宅地化して効率的に利用できますが、傾斜角度が急な場合には宅地化が困難であったり、宅地化できたとしても、造成費用が高額になるなど、評価の減額が大きくなる場合があります。
傾斜地の角度が30度を超える場合は、一般的に宅地化が困難であるとされ、崖地の扱いとなります。自治体により取り扱いは異なりますが、多くは、崖地の高さが2m超える場合は近接する土地に建築制限がかかります。
崖に近接した土地には建物を建てることが制限されますが、擁壁を築くことで建築可能となります。擁壁を築かなくても建物の構造を堅固なものにする、高基礎、深基礎といった対策を講じることによって、建築可能な場合もあります。
崖地が崩壊しても、建物が押しつぶされ、人命にかかわるような事態が生じないように建築が制約されているわけですが、災害リスクは高い土地といえます。
近年、土砂災害防止法の特別警戒区域、警戒区域が順次指定され、地域住民にリスクの高いエリアを周知するなど、防災意識が高まっていますので、崖地を含む土地の売却が困難であったり、成約しても価格水準が相当に低いケースなどが散見されます。
【事例】
・神奈川県某市 原則評価12000万円⇨鑑定評価8000万円 評価減̠▲4000万円 節税▲1200万円(税率30%)
・都内多摩地区 原則評価4000万円⇨鑑定評価2400万円 評価減▲1600万円 節税▲480万円(税率30%)
事例2 崖地の隣接地
事例1のように崖地を含む土地は減額可能性がありますが、崖地の隣接地も同様に、建物の建築規制がかかりますので、評価減の可能性があります。
【事例】
・都内多摩地区 原則評価9000万円⇨鑑定評価8000万円 評価減▲1000万円 節税▲200万円(税率20%)
事例3 無道路地

無道路地とは、建築基準法の接道条件を満たしていない画地のことです。
建築基準法の接道条件とは、原則、幅員4m以上の道路に2m以上接していること。この条件を満たしていないと、建物建築が許されません。
注意しなければならないのは、
・幅員2m未満の道路に接していても原則的には無道路地であること。
・4m以上幅のある道路状の敷地に接していても、建築基準法上の道路でなければならないこと。
・現在、古い建物が建っていても、無道路地である可能性は十分あること。
・道路と敷地の間に細い他人地が介在している場合などもあること。
【事例】
・23区内 原則評価5400万円⇨鑑定評価2800万円 評価減▲2600万円 節税▲780万円(税率30%)
・神奈川県某市 原則評価1800万円⇨鑑定評価1000万円 評価減▲800万円 節税▲160万円(税率20%)
・神奈川県某市 原則評価4000万円⇨鑑定評価2400万円 評価減▲1600万円 節税▲320万円(税率20%)
事例4 不整形地

不整形地とは、形状の悪い土地のことです。
東京都では、原則、L型地(間口が狭く通路上の土地の奥に有効宅地が広がっている土地)であると共同住宅の建築ができません。マンション建築の可否如何で評価額は大幅に異なります。
また、間口が2m未満となれば無道路地に該当しますので、建物建築が不可能となれば減額は大幅です。
間口が2m以上あっても、減額は生じます。戸建住宅地内の規模の大きな画地などは、3区画に分譲したくても、間口が4mであると2区画分譲しかできませんので、取得者層の予算に合わせるには単価を下げて販売せざるを得なくなり、評価も下がります。
三角形などの土地は、効率的な建物配置が困難で、減額可能性があります。
【事例】
・都内多摩地区 原則評価6000万円⇨鑑定評価4500万円 評価減▲1500万円 節税▲450万円(税率30%)
・23区内 原則評価18億円⇨鑑定評価16億円 評価減▲2億円 節税▲9000万円(税率45%)